株式会社ライブレボリューション
代表取締役社長
<Profile>
1974年生まれ 奈良県出身
早稲田大学大学院商学研究科修了
「宇宙一の企業を創る」― 2000年8月、株式会社ライブレボリューション の代表取締役社長に就任。経営者向けメールマガジン『プレジデントビジョン 』の発行者。著書に『宇宙一愛される経営 』(総合法令出版)、『仕事頭がよくなるアウトプット勉強法 』(サンマーク出版)、『Twitter就活 』(ダイヤモンド社)ほか2冊がある。(http://www.live-revolution.co.jp/masunaga/ より)twitterは@masunaga_lr
学生起業は甘くない!
ライブレボリューションの社長を務める増永寛之氏は開口一番、学生起業について一蹴する。
「学生は会社組織や世の中の仕組みをまだまだわかっていない。そんな状態で起業した
ら、世間ずれした経営者になってしまいますよ。学生起業では社会一般的に大事とされる
ことが欠落しがち。例えば、ちゃんと法律を守れるのか、きちんとした挨拶ができるのか
など、そもそもの基本的なことが抜け落ちていることが考えられます」
増永氏は、「プレジデントビジョン」という経営者向けメールマガジンを立ち上げて早
8年。数多くの経営者にインタビューを行なってきているが、なかには学生起業家も多く
いる。その経験から次のように語っている。
「私が取材した学生起業家たちは、一般的な挨拶だとか時間を守るといったことすらでき
ていないことが多々あります。それに加えて、あまり大きな失敗をしていないから、相手
に対する礼儀といった基本的なことすら意識できていない。やはり、『まぐれかな』と思
うところがありますね。実際、取材後に会社が傾くといったこともあります」
学生起業家は情熱と意欲にあふれている。それこそが大きな強みであると言っても過言で
はない。だが、勢いばかりが先立って周りが見えなくなってしまうことがしばしばあるようだ。
「社会人経験があれば、当たり前にやらなければいけないことを分かっています。だか
ら、最低限のことができたうえで、あとはやりたいようにできるんです。ところが、学生
は『当たり前のことができない』ことが多い。まずはそこを埋めていったほうがいいので
はないかと思います」
増永氏も、一年間「大和証券」での勤務経験がある。大企業での「社会経験」には大きな
意義があるのだとか。
「当時の大和証券は総勢9000人という大きな会社。その会社にどんな人がいて、どんなビ
ジネスモデルで、どんな職種があって、どんなお客さまが何に対して対価を払っているの
か。さらには福利厚生のありかたなど、会社として最低限必要なことを一通り学ぶことが
できました。その経験は起業したときにも活きていると思います」
ところが、学生が起業をすると最低限必要な社会経験は積めないし、失敗しても「学生だ
から」と許されてしまうケースが多い。そして、その甘さが大きな失敗につながるのでは
ないか、と氏は懸念する。
「まず学生に必要なのは『人の話を聞く謙虚さ』。相手を不快にさせたら意味がありませ
ん。会社は社会貢献を目的としてやっているはず。なのに、それ以前の問題として身近な
人に無礼をしては本末転倒です」
夢やビジョンを持つことは良いことだ。しかし、ただ‘遠く’を見渡すばかりではなく、‘近
く’に視点を置いてみる。そこから、礼儀・法の遵守といった「人間として大切なこと」が
見えてくるはずだ。
「だからといって、就職してから起業したほうが良いと言うわけではありませんよ。むし
ろどんどんチャレンジして欲しいと思います。若い時にいろいろ経験していれば、その苦
労がのちに役立ちますから。先ほどの話は、メリットとデメリットの話で、後者を強調し
たに過ぎません。そんな基本的なことも知らずにやる人たちが多いですし、そんなことで
苦労を増やすのは勿体無いと思ったから口にしたまでです」
学生起業家のメリットは、失敗しても次に活かすチャンスがあること。
「自分のやりたいことに邁進することはすばらしいことです。ただ、前提には『人間とし
て』の自分があることを心に留めておいてほしい」
礼儀・法令遵守・謙虚さ――どれも一見当たり前に必要なことのように思えるが、果たして
我々はしっかり行動に反映できているのか。
増永氏は学生起業家について、そう警鐘を鳴らしてくれた。
反面教師から学ぶ
増永氏は起業に至るまでどんな学生生活を送っていたのだろうか。出身大学は横浜国立大
学経営学部。
「大学は『短期大学』といわれるくらい二年間でほぼすべての単位がとれる楽勝学部だ
ったんです。なので、『Cでいいから』と、まず単位だけとりましたね(笑)」
早々に単位を取得して、アルバイトに明け暮れた。氏の大学生活は「お金を稼ぐこと」と
切っても切り離せない。
「実は在学中に、父の勤めていた会社が倒産したんです。だから、実家からの仕送りはゼ
ロ。以降、学費も全て自分で払いました。そのためにひたすらアルバイトをしていたので
す。とにかく『稼ぐ』ことに時間を注いでいました」
塾講師・ビアホール・カラオケ店員などさまざまな職種を経験したという。大学生にと
って、アルバイトは一番身近な「社会経験」であるが、その経験は今にどう活かされたの
か?
「耐乏生活を味わえたことが大きいです。当時、死ぬほどアルバイトをしたおかげで、仕
事をすることに対して拒否感がなくなりました。仕事の辛さに慣れたのは大いによかった
です。そしてもう一つ、お店の中の人間模様や儲ける仕組みを直に見られたことですね」
しかし、アルバイト経験や学んだことを、そっくりそのまま自分の組織にコピーするので
は意味がないとも語る。
「なぜなら、そのお店でやっていることをコピーしたら同じレベルの組織にしかならない
から。大概は反面教師にすべきです。だから、『それをやってはいけない』ということを
学びました」
「経験したことは、自分の経営における反面教師だった」、それが氏にとって、学生時代
のアルバイト経験から得たものだったのだ。
就職から起業に至ったワケとは!?
学生時代を経て、増永氏は就職の道を選ぶこととなる。
「当時は自分が起業するなんて、夢にも思いませんでした。私の目標は『大企業で出世す
ること』でしたから(笑)」
そこで、前述のように増永氏は「大和証券」に就職を果たす。
「その理由としては、ともかくお金がなかったから。自分だけではなく親の分も稼がなく
ちゃいけない。もちろん、初任給で親を食べさせるわけではありませんが、何十年も働け
ばのちのち給料も増える。そのときに『仕送りできそうなくらいしっかり稼げる会社って
どこだろう?』と考えついた先が証券会社。『ここで出世すれば……』と当時は思ってい
ましたね」
折しもときは1990年代後半でネットバブルの直前。ソフトバンクやライブドアなど多くの
企業がインターネットを利用し、新たなサービスを打ち出していた。配属された渋谷支店
で働きながら、氏はネットバブルを膨らませている人たちと出会うこととなる。
「実際にインターネット関連で起業している人を知り、そこで初めて『会社は自分で作れ
るんだ』と知りました。それまで『自分は自分で作れるもの』という認識が全くなかった
ので衝撃を受けましたね」
実際に「起業」した人と触れ合うことで、増永氏の想いも徐々に起業へ傾いていく。
「彼らと交流していくうちに『自分にも会社を作れるんじゃないか、作ったら良い会社に
なるんじゃないか』と勘違いをしてしまいました(笑)。そして、ネットバブルが弾けた
あとだったにもかかわらず起業したのです」
(文:山中@yamachika0719)
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