今回はネットエイジ西川潔氏へのインタビュー。学生起業について伺いました。
株式会社ネットエイジ
東京大学教養学部卒。KDD (現KDDI)勤務を経て、アーサー・D・リトルの米国本社勤務時に起業を志す。帰国後、アメリカ・オンラインの日本法人の創立に参加。その経験・人脈を 生かし、 1998年2月、ネットビジネスインキュベーターという日本初の業態をもってネットエイジを創業。“渋谷ビットバレー構想 “を提唱するなど起業活性化に尽力。そして2011年2月、もう一つの新生ネットエイジを再興し、新たなムーブメントを起こそうとしている。twitterアカウントは@kiyonishikawa株式会社ネットエイジ http://www.netage.co.jp/
学生起業について
「学生起業?どんどんやれという感じですね」
西川氏は学生起業を積極的に勧める。
「たしかに、学生は社会人よりもまだまだ“経験“は足りない。しかし、”経験“というものは二つの側面を持ち合わせている。一つは、経験があるから変な落とし穴にはまらずに済むこと。これは誰でもわかると思います。もう一つは、経験を積みすぎたゆえに常識の鋳型にはめられてしまうということ」
これが“経験”のプラス面とマイナス面。むしろ、マイナス面の方が大きいという。
「実は、本当に世の中を変えるようなアイデアというのは素人から出てきます。その業界に何十年もいて思考が硬直してしまうと柔軟な発想ができなくなる。だから、学生は経験がないから起業できないってことはないんですよ」
たとえ失敗しても、学生ならば立ち直るチャンスはいくらでもある。
「失敗して立ち直れないというのは大人の方ですね。妻子のために絶対に食わせていかなければならない立場にある人の方がリスクが高い」
だから、学生のうちにどんどん試行錯誤しながら経営していっていいのだと。
「今はインターネットがあるんだから、実体験がなくとも検索することで知識をかき集めて社会の矛盾点を探り出し、その解決となる事業をプランしてみることができる。正直言って社会人のやってることなんてたいしたことないですよ(笑)だいたい本当の意味で大物になった人って一度も社会人経験ない人が多いです。例えば、孫さんやホリエモン、リクルートの江副さん、ザッカーバーグだってそうで、いきなり自分の会社を作った」
西川氏の大学時代
氏は起業を知り尽くした上で学生起業を勧める。では、自らはどのような学生時代を過ごしていたのか。
「僕の大学時代はというと、おちゃらけでした(笑)東大のトマトというテニスサークル」
つまり、起業という選択肢を当時は全く考えていなかったそうだ。
「周りの人間もあまり起業を考えている人はいませんでしたね。なにしろ、高度経済成長期だったので大企業に入れば潰れることもないし、いいことあるだろうくらいにしか考えていなかったと思います。いたとしても、軽い感じの起業でダンスパーティとか開いている人はいっぱいいましたよ」
しかし、氏にはそれが「会社ごっこ」に見えた。それも起業に対しての学生の意識は昔と今で異なるからだ。
「昔と比べて今はそんな時代じゃありませんよね?今は学生でも起業というのは十分現実的な選択肢になってきたと思う。それから、今はインターネットがある。そのおかげで学生でも本格的なことができる。むしろ、大人顔負けじゃないですか」
今の時代ではそういう若い人が経験のある人より上に立つことができる時代。
「まさにfacebookの創業者とかね。しかし、これはネット業界に限ったことで、例えば石油業界でトップに立つことは難しいですよね(笑)これがあり得るという点で面白い世界だなと僕は思いますよ」
そして、こういったネット業界で成功している者は自らwebページを構築し、起業していることが少なくない。なぜなら、思いついたアイデアを自らがすぐに実装できるからだ。
「だから、僕が学生に対して言いたいのはプログラミングを勉強しろと言いたいです。たしかに、コンピュータを扱うだけであればそりゃ誰だってできますよ。しかし、使えるだけじゃだめです。価値があるのは、コンピューターの裏側に入ってソフトウェアを作る側。最初は簡単なゲームを作るだけでもいいので、作る側の技術の価値がどれだけあるのかっていうのを知った方がいい。まだ学生で頭の柔らかい時期だったら一年で十分学習可能ですよ。僕がもし今学生だったらサークルなんか辞めて家にこもってプログラミングを勉強しますね(笑)」
起業したわけ
氏は大学時代を終えた後、すぐに起業したわけでもなかった。
「僕が起業したのは社会人になって10年ほど経過してからです」
それまではいろんな会社を転々とした。
「しかし、転職ばかりしていては良くないなと思ったんです。転職しても、これはやりたいことじゃないなということが多かった。また、決まり切った仕事を毎日やらされて、つまらない。そして、尊敬できない上司に低い評価を受けたり不合理なことが色々ありました」
そういったことに疑問を感じていたそうだ。
「たしかに、一連の転職を経験したことは今振り返ってみても人生の重要な選択肢ではありました。しかし、やはり自分の会社を作って自分で舵取りをしたいなと感じた。それが30歳のとき」
しかし、そう感じていたものの、なかなかチャンスは訪れなかった。
「しばらくは我慢して企業で働いていました。それまではボーっとして過ごしていましたね。だが、そこでインターネットの時代が来た。そこで『インターネットは絶対に来る』と思い、起業をしてネット業界に飛び込みました。当時はインターネットのことなんてほとんど知りませんでしたが、誰もが素人だったのでよかったんだと思います」
大企業⇛起業の功罪
大企業を経て起業をした。氏のように学生起業ではなく、大企業からの起業という選択肢はどうして勧めないのか。
「大企業に入ることにはメリットはあります。実際に入ってみないとわからない仕組みを知ることができる。一度でも企業のインサイドに入った人が体験できることはいっぱいあるんでね。その体験を活かして起業チャンスを掴むこともある」
しかし、大企業に入るデメリットも存在するという。
「そもそも、企業に入ったら自分のやりたいことが通らない。また、どこに配属されるかもわからない。例えば、経営戦略がやりたくて入っても、人事部に配属されたり全然わからない。つまり、大企業に入るということは『煮ても焼いても好きに使って下さい』と言ってるのと同じですよ。主体性を全て放棄する……まあそこまで言うと極論かもしれないけどね。その配属先で徐々に頭角をあらわしていけばだんだんと自分の希望が多少通るようになってくる。しかし、うまくいっても既に30代40代。遅いですよね(笑)」
それよりも学生起業はデメリットは少ない。やりたいこともできるし、リスクは小さい。
「たとえば、大学2年で起業して倒産しちゃったとしても、就職活動のときに力強くアピールできますよね?『サークルの幹部やってました』というよりも採用する側としては遙かに取りたい人材です。そういった意味でも学生ベンチャーというのは成功しても失敗してもプラスに働く」
そして、氏はこう続ける。
「僕は思うに、『1年生のときに必死にバイトして100万貯める→2年生で、プログラミングを勉強する→3年生で起業→失敗したとしてもベンチャーに就職してその後起業するか、もしくは成功してそのまま事業を継続するか』というのがゴールデンルート」
学生起業のメリットは失敗がある程度許容できる点。一方、成功するには……
「しかし、あえて言うと、大企業であろうがベンチャーであろうが全部運ですよ。運がよければどこでも成功します。じゃあ、運をどう良くするのかというと解答は持ってないけど、チャンスを作るっていうのは方法論としてあると思います。自分で勉強し、常に問題意識を高くもって、問題意識のエッセンスを発信し続ける。そうすると、誰かが見てくれて面白いと思い会ってくれる」
そこで、自らチャンスを掴んでいく。行動しなければチャンスは訪れない。
「いくら問題意識があったとしても発信しなかったら誰にも知られないままで終わってしまいますよ。孤独に。その点で、インターネットは強いと思いますよ。特にSNS。Twitterなどでつぶやいたり、ブログを拡散させることで誰かに見てもらえる。例えば、“もっち君”が良い例で面白いことを発信していろんな人と会っています。期待の学生です」
“もっち君“西川氏にそう呼ばれるのは、慶應大SFC2年の鶴田浩之 さん(@mocchicc )。今年2月に再興した新生ネットエイジのスタートアップ支援事業の第一号案件として西川氏に選ばれた学生起業家だ。
(文:両角@ryokado )
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