こちら 。
ネットエイジ西川潔氏へのインタビュー第2回目。 学生起業について伺いました。前回のインタビューは株式会社ネットエイジ 東京大学教養学部卒。KDD (現KDDI)勤務を経て、アーサー・D・リトルの米国本社勤務時に起業を志す。帰国後、アメリカ・オンラインの日本法人の創立に参加。その経験・人脈を 生かし、 1998年2月、ネットビジネスインキュベーターという日本初の業態をもってネットエイジを創業。“渋谷ビットバレー構想 “を提唱するなど起業活性化に尽力。そして2011年2月、もう一つの新生ネットエイジを再興し、新たなムーブメントを起こそうとしている。 twitterアカウントは@kiyonishikawa 株式会社ネットエイジ http://www.netage.co.jp/
起業後
最初の仕事はインターネットビジネスの調査。依頼主は富士通総研だった。
「アメリカのビジネス実態の調査を依頼されました。最初なのでたしかに報酬は少なかったです。しかし、それでも海外で起きていることを周りよりも早く知ることができました」
この仕事を受けたことによって、氏は最先端のビジネスに触れ、自分たちのやりたいことを探すことができたのだ。
「調査で得た情報は『週刊ネットエイジ』という形で配りました。もちろん、その調査内容自体を配っていたわけではありません。依頼主に指摘されない程度に、別の形で情報を出していました」
そして、これが大当たりした。これを読んで「ネットエイジに入りたい」「出資したい」と言ってくれる人たちが出始めた。
「ここで飛躍のきっかけを掴みましたね。結局のところ、やはり発信していないとダメだと思います。今はTwitterやブログがあります。しかし、当時はメルマガ。ただ、この頃からネットの普及は確実視していました」
ネットの可能性
氏はネットを基盤に成り立つビジネスは必ず増えるとかなりの強気派だった。
「でも、常識派の人たちは常に懐疑派になるんです。そんなのお遊びだと。『俺は一生電子メールは使わない!』と言った人もいましたね(笑)常識ある大人に限ってそうやって言ってくる」
しかし、結果はこうなった。信じられないスピードでネットは進化してきた。
「これからもネットはどんどん進化していくと思います。まだ気付かれていなくとも、大きなことを仕掛けている人が必ずどこかに潜んでいる」
例えば、Googleもこれ以上でかいサービスは出てこないだろうと思われていた。しかし、4年後にはFacebookが現れ、Googleはトップの座が危ぶまれている。
「ただ、Facebookもスタートしたときに、もちろん『Googleを追い抜くぞ』なんて思っていたわけじゃない。ザッカーバーグは単に身の回りであったらいいなと思うものを作っただけです。結果的にユーザーの受けが良くて広がった」
インターネットの変遷 インターネットは進化の途上にあるが、現在はちょうど大きなフェーズがシフトしていく過渡期にあるという。
「まず、第1フェーズは、送り手から受けてまでの情報の流れが一方的だった時代でした。そして、第2フェーズはweb2.0とも言われ、送り手や受け手が流動化して誰でも発信できるようになった時代」
例えば、単に広告をたくさん並べるものは第1フェーズ、旧来は受け手であったユーザーが口コミを出していくのが第2フェーズ。
「そして今、インターネットは第3フェーズに入ったという印象を受けます。そして、このフェーズがまさに『ソーシャル』。そもそも、第2フェーズの口コミっていうのは結局知らない人の情報です。一方、友達がこう思ったっていう情報はより信頼できるはず」
ネットエイジの挫折
「起業して1年経過した頃に倒産の危機に陥った」
最初はその時点での貯金1500万でスタートした。しかし、初期の売上はゼロ。
「開業準備などで毎月100万ずつ減っていく…すると1年後にはあともう100万しかないわけですよ。これはピンチでしたね」
そこで、一件仕事ができ、間一髪食いつなげたそうだ。このときに手がけた事業が、今のヤフー自動車となる。
「しかし、その仕事がこなかったら終わってましたね。これ以上誰もお金を貸してくれない、そんな窮地まで追い込まれていましたから」
こういう幸運があったからこそ、今の会社があるのだという。
「やはり資金に余裕は欲しいですね。でも、それで失敗してもまあそれでいいじゃないですか。その経験を活かしてまた次のチャレンジも出来る。その経験は決してムダじゃないさ」
氏が危機に陥ったとき、原動力となったのは何だったのだろう。
「なんとしてでも生き残ろうと思いました。あと少しで取れそうな仕事を何とか取ろうという執念。これが原動力となりました。しかし、毎日行ってたら向こうだって迷惑になっちゃう。ガツガツ行くわけではなく、いかに上手く売り込むかを考えてやって仕事をもらえましたね」
ネットエイジは現在は起業支援を中心としている。いつから今の業態にシフトしたのだろう。
「だいぶ後になってから起業を支援するようになりました。当時は支援なんて言葉は使っていなかったですがね。それまでずっと内部で新規事業を作っていました。しかし、その新規事業の担当者が自分の会社でやりたいですと言ってスピンオフした人がいました。そこにネットエイジが出資したのが始まりです」
ECナビの宇佐美氏もそのうちの一人。また、mixiの笠原氏もネットエイジの門を叩いて居候のような形で創業したそうだ。そして、ネットエイジを去り自らの会社を作り上げた。
学生こそ起業を!
他にも同じような形で起業家を輩出したそうだ。なぜ、なぜ多数の起業家を受け入れたのだろう。
「来る者は拒まず、去る者追わず。来たきゃ勝手に来いって感じですね。出て行くなら出て行きなさい。あまり人を管理するのが好きじゃなかったのでこうなったんだと思います」
ここで受け入れるのは、社会人だけではなく、学生起業家も含まれる。
「学生でも全然構わないんですよ。むしろ、学生の方が起業を勧めたいですね。社会人経験積んでからやれという人もいるけど、僕は逆。それこそ坂本龍馬じゃないですが、世の中を動かすのは結局若い人です」
なぜ、若者が世の中を動かすというのだろう。年齢層が上がると動かせないのか。
「大会社では40歳までは下っ端。たとえば、課長なんて一つの小さな部門の責任者ですよ。リーダーになるまでにかかる時間は10数年。これほど長いこと会社にいると革新的な事ができなくなる」
しかし、年齢層が高くとも世間を動かす者はいる。例えば、スティーブジョブズや孫正義。
「もちろん、年齢だけのせいではない。その組織に居続けること自体がリスクをとれなくなる要因です。組織の空気に染まり切っちゃうとだめ。孫さんに関してはあれだけ大きな企業でも奇跡的にベンチャー精神を感じ続けていて凄いと思いますね」
成功のためには?
「そもそも、どこからが成功かっていうのはわかりません。しかし、失敗の場合は簡単で、お金がなくなったとき」
サービス閉鎖、会社の解散。これが失敗。
「失敗の定義ははっきりしているが、成功の定義ははっきりしていない。だから、成功するには何をすれば……なんてものはありません。なんらかの形で前進し続けるしかない。そして、アイデアがイケてるってことは必要条件です。十分条件としては利益が出るところまでもっていくこと」
利益が出始めれば、会社を存続することができる。
「そこで、利益を出すためにはどうすればいいんだと疑問に思うかもしれません。しかし、それに答えようとしてもあまりにもパターンが多すぎて一言じゃ語れないです。何をすればいいかわからない人は海外の情報源を読んでみてください」
ネット上にも、シリコンバレーで有名なブログ等起業に関する記事がたくさんあるそうだ。
「まず、日本語で書かれた記事はたいしたことないんですよね。残念ながら起業に関する知識はアメリカのほうが進んでいます。切磋琢磨するレベルも違う。日本の学生のビジコンで優勝しても意味がない。まずは学生さんにはもっと知ってほしいですね、世界レベルを」
中国人や韓国人はそのレベルに達しているパターンも少なくないそうだ。
「日本人も世界水準を味わって最初は挫折を味わうと思うけど、がむしゃらにキャッチアップしてみてほしい。そこから、それらを上回るようなものを作っていってください」
【西川氏からメッセージ】
厳しいことを言うようですが、学生さんのアイデアを見るとやはり子供っぽいのが多い。例えると、シリコンバレーの起業家は大リーガー、日本の学生ベンチャーのアイデアは少年野球。つまり、高校野球レベルですらない。
だから、シリコンバレーなど最先端の情報源をネットでも何でもいいから探して読んでみてください。たとえば、Y-combinater等シリコンバレーの有名なインキュベーターがどういう会社に出資しているかとか、一流レベルの人がどんなことをやっているのかっていうのを調べ、よく研究して欲しい。そして、それに匹敵するくらいのレベルを自分たちで考えて欲しい。英語が読めれば、少しの努力でできますよ。自分で探したりするのも努力の一つです。
このブログはこれから起業したい学生も読むんだろうと思うので告知を。ネットエイジという会社を再スタートしました。起業する人たちをアドバイスや金銭面に関してバックアップする会社です。学生は大いに歓迎します。ネットベンチャーだと失敗しても食うに困ることはないと思うし、どっかに再就職の斡旋もしてあげられると思います。逆に私たちが生み出していった会社で人員が必要となったときに加わってもらうこともあるかもしれません。いろんな形でリスクを軽減できるよう支援しようと思っています。我こそはというオリジナリティある人は是非うちの門を叩いてみてください。
(文 両角@ryokado)
Post Footer automatically generated by Add Post Footer Plugin for wordpress.